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興味のあることをまとめて書きます

「多い勝ち」とかいう一見公平に見えて実際には支配者層が勝つだけの社会の縮図のようなジャンケンに怒りが収まらない

「多い勝ち」というジャンケンをご存知だろうか。

これは、大人数でジャンケンを行っている途中、あいこが続いてしびれを切らした誰かが「あいこでしょ!」の代わりに突然「おーいがち!!」と宣言する事によって発動するジャンケンの特殊ルールである。その名の通り、その場で出されたグー・チョキ・パーのうち最も多く出されていた手が勝利となる。これにより次のジャンケンに参加する人数が絞られ、あいこの確率を下げて迅速に勝敗を決めることができる。小学生当時、余った給食のデザートを巡る戦いや、ドロケーの警察を決める場面、また特に学級委員や美化委員といった誰もやりたくない雑用を押し付けられる生贄を選ぶ際によく用いられていた記憶がある。

この「多い勝ち」、一見すると公平である。参加者は自分の意志で出す手を選ぶことができる。だからもし負けたとしても、その場でどんな手が最も多く出されるかというランダムな事象を的中させることができなかった自分が、いや運が悪いということになる。……少なくとも建前としては。

しかしながらこのゲームにはラクがある。当時の亀山少年は、「多い勝ち」のたびに、ある異変を感じ取っていた。それは、内田や小林といったいわゆる「スクールカースト上位層」のメンツが毎回ことごとく「多い勝ち」で勝利していたのである。一方で負けとなった側はことごとくパッとしないメンツばかり。通常のジャンケンでは到底考えられない確率の偏りに、美化委員となった亀山少年は何か作為的なものを感じ始めていた。

そう、この「多い勝ち」には必勝法がある。パーを出せば勝てるのだ。このゲームには情報カルテルが存在し、友達の多い陽キャな少年達の間では「多い勝ちではパーを出す」という必勝の共通戦略を入手することができていたのである。それを知らないそして友達も少ない哀れな少年達は、この「多い勝ち」とかいう陰キャエリミネーション・システムの前に無惨にも散っていったのだった。

この人類の悪意を体現したような「多い勝ち」であるが、一見オープンかつ公平に見せかけつつも、実際には閉鎖的なグループ間で利益を独占する仕組みとして、美しいほど良くできている。特にパーという必勝手のチョイスがニクい。前述した通り、「多い勝ち」はある一人の掛け声によって唐突に始まる。唐突にジャンケンすると人はグーを出しやすいという俗説がある。これを踏まえてパーが必勝手として膾炙したのだとすれば……陰キャを絶対に殺すという固い意志がこのジャンケンから滲んでくるようだ。

ところでこの「多い勝ち」は小学6年生にもなると大多数の児童にそのカラクリが喝破され、場のほぼ全員がパーを出す異常現象が発生し、役割を終えることとなる。だがこの社会には、もう少し巧妙にカラクリが隠された「多い勝ち的システム」が存在しているのではなかろうか。一見公平な選挙によって議会がどんどん世襲議員に占められていき、一見公平な入試を経て入ってきた東大生の親はたいてい高収入……。

今これを読んで「とうとう陰謀論にハマったか」と哀れんでるそこのお前、まあお前は知らないかもしれないけど、実際あるんだよね、そういう閉鎖的に共有されたこの社会の必勝法が。現に俺はもうメンバーだから、そこから莫大な利益を得てる。お前はそのままボーっと何も知らずにチョキとかグーとかを出し続けて俺たちみたいなのから搾取されてるといいよ。でも……まあ、これを読んでくれたのも何かの縁、ってやつかな。お前だけには特別に教えてあげるよ、この必勝法を……!

まず、100万円を振り込んで販売資格者になるんだ。大丈夫、実質タダ、というかむしろプラスみたいなもんでさ、このカタログの商品や販売権が売れるとインセンティブとして4割が自分に入ってきて……